科学小説

喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの科学処方』#9

特別編2:マスクウェルの悪魔と始まりの紹介状 一 「…もう、どうにもならないわ。盤面が複雑に絡まり合いすぎて、どこから手をつければいいのかすら分からない」 数年前の、冷たい雨が降る秋の夜。喫茶「ラプラス」のカウンターで、深くため息をつきなが...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの科学処方』#8

特別編:天才サラリーマンとラプラスの悪魔 一 雨がそぼ降る金曜日の夜。カラン、と真鍮のベルを鳴らして喫茶「ラプラス」に入ってきたのは、少し濡れたトレンチコートを羽織った鋭い眼光の男だった。 「まだ…、開いてますか」「ええ。どうぞ、カウンター...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの科学処方』#7

第7話:板挟みのマネージャーと心の緩衝液 一 「はあ…もう、自分が何のために会社にいるのか分からなくなってきました」 水曜日の夜。ネクタイを緩め、疲れ切った顔で喫茶「ラプラス」のカウンターに突っ伏したのは、中堅メーカーで課長を務める達也(た...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの処方』#6

第6話:波長とノイズキャンセリング 一 「…はあ、今日も一日中、神経がすり減った」 火曜日の夜、喫茶「ラプラス」の重厚な木の扉を押し開けたのは、メーカーの営業部で働く結衣(ゆい)だった。彼女は耳をすっぽりと覆う大きなヘッドホンを外し、ため息...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの科学処方』#5

第5話:アルゴリズムに宿る影 一 土曜日の夜、閉店間際の喫茶「ラプラス」に、システムエンジニアの青年・蓮(れん)がやってきた。彼はカウンターの隣に座ると、冷めたコーヒーをぼんやり見つめながら呟いた。 「マスター…AIって、いったい何なんでし...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの科学処方』#4

第4話:心のなかの「モノサシ」 一 「はあ…SNSを見るたびに、なんだか自分がすごくちっぽけに見えてきちゃって」 金曜日の夜、喫茶「ラプラス」のカウンターに座ったのは、アパレル店員の絵里(えり)だった。彼女はスマートフォンを伏せテーブルに置...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『ラプラスの科学処方』#3

第3話:脳は三日坊主が好き 一 「はあ……私、本当にダメな人間なんです」 木曜日の夜、喫茶「ラプラス」の扉を開けて入ってきたのは、スーツ姿の若いサラリーマン・拓海(たくみ)だった。彼はカウンター席にドスンを腰を下ろすと、頭を抱えてテーブルに...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの科学処方』#2

第2話:対流とすれ違いのサーキュレーター 一 「はあ、もう嫌になっちゃう。いくらエアコンをつけても、足元は冷えて冷え性になるし、頭の方ばかりぼうっと熱くて仕事に集中できないんです。かといって設定温度を下げると、今度は夫が『寒すぎる』って文句...
喫茶ラプラスの科学処方

連載小説『喫茶ラプラスの科学処方』#1

第1話:エントロピーは片付かない 一 夕暮れ時の住宅街に、ぽつんと灯る暖色の看板がある。木製の扉に真鍮のプレートで『Café Laplace(ラプラス)』と掲げられたその店は、一見するとどこにでもある落ち着いた喫茶店だった。だが、この店を訪...
天才サラリーマン椎名賢人の事件簿

第1話:虚構の理想郷(AETHER)

2026年、夏。 全世界で登録者数が5,000万人を突破した、完全没入型(フルダイブ)メタバースプラットフォーム『AETHER(エーテル)』。 脳波同調型の最新型VRデバイス『Neuralink-V』を装着することで、視覚・聴覚のみならず、...