こんにちは、皆さん!突然ですが、こんなことを考えたことありませんか?
- 割れてしまったコップの破片が、自然に元に戻ることはない。
- お湯に溶かした砂糖が、再び元の結晶に戻ることはない。
私たちの身の回りでは、物事が「バラバラ」になる方向にしか進まないように見えます。この不思議な現象こそ、時間の流れが一方通行であることの鍵を握っているのです。
今回は、この時間の謎を、「熱力学第二法則」という物理学の考え方を使って、一緒に解き明かしていきましょう。
宇宙は「エントロピー」が増えることを好む
熱力学第二法則を理解する上で、最も重要なキーワードが「エントロピー」です。
エントロピーとは、簡単に言うと「物事のバラバラ度合い」や「無秩序さ」を表す物理量です。イメージとしては、部屋の片付けを考えてみてください。
1.片付いた部屋:物がきちんと整理されていて、エントロピーが低い状態です。
2.散らかった部屋:物がゴチャゴチャになっていて、エントロピーが高い状態です。
「熱力学第二法則」は、孤立した系(外部からの影響がない状態)では、エントロピーは常に増大する、と定めています。つまり、宇宙全体は、「無秩序な方向」に進むことを好むのです。
なぜ割れたコップは元に戻らないのか?
では、これをコップの例で考えてみましょう。
- コップが割れる前
コップの分子は、きれいに並んだ整然とした状態にあります。これは、エントロピーが低い状態です。
- コップが割れた後
破片の分子は、バラバラになり、周囲に飛び散ります。これはエントロピーが非常に高い状態です。
「熱力学第二法則」によれば、エントロピーは増大する方向にしか進まないので、「低いエントロピー」から「高いエントロピー」へ変化することはあっても、その逆、つまりバラバラになった分子が自然に元の整然とした状態に戻ることは、事実上有り得ないのです。
これは、宇宙が膨大の数の分子が偶然に元に戻るのを待つよりも、より多くの無秩序な状態に向かうことを選んでいるためです。
熱力学第二法則が時間の矢を指し示す
時間の流れが一方通行であることは、このエントロピーの増大によって説明されます。物理学者は、この不可逆的な変化を「時間の矢」と呼びます。
この法則は、私たちが経験する日常のあらゆる現象、例えば、熱いコーヒーが冷めたり、インクが水に広がったりする現象に当てはまります。これらはすべて、エネルギーや物質がより均一に、そしてより無秩序な状態へと拡散していく過程であり、エントロピーの増大そのものです。
熱力学第二法則が示す、宇宙の「好み」
ここまで読んで、「なぜ宇宙はエントロピーが増えることを好むの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。実は、この法則は、宇宙が特別な状態を避けて、より起こりやすい状態へ向かおうとする「確率」に基づいています。
確率が支配する宇宙のルール
ここで、もう一度、部屋の例を考えてみましょう。あなたはたくさんの積み木を持っています。
- 秩序だった状態(エントロピーが低い状態)
すべての積み木を、色や形ごとにきちんと並べる。これは、数ある配置方法の中でごく限られた、特定の状態です。非常に注意深く、多くの努力をかけなければ実現できません。
- 無秩序な状態(エントロピーが高い状態)
積み木を無造作に放り投げる。これは、積み木がバラバラに散らばる、ありとあらゆる配置方法の中の1つです。少しの力で、簡単に実現できます。
宇宙の物質も同じです。コップを例にすると、分子がきれいに並んだ「元のコップ」という状態は、分子がバラバラに散らばった「割れたコップ」の状態よりも、可能な配置の数が圧倒的に少ないのです。
熱力学第二法則は、この「状態の数」の差を定式化したものに他なりません。宇宙は、可能な状態の数が圧倒的に多い、つまり「より散らばった無秩序な状態」へと自然に向かうのです。
この法則は、特別な意思や力があるわけではなく、単純な確率論の結果として現れます。宇宙は、最も起こりやすい、最も可能性の高い状態へと、ただただ進んでいるだけなのです。
まとめ
時間はなぜ逆戻りしないのか?その答えは、「宇宙はエントロピーを増やす方向、つまり無秩序な方向にしか進まない」という、熱力学第二法則が示す根本的な性質にあるのです。
この宇宙のルールがある限り、私たちは常に未来へと進み続けることになります。このブログを読んで、少しでも物理学の面白さに触れてもらえたらうれしいです!