エネルギー問題の救世主?「核融合発電」が今、なぜ注目されるのか
地球温暖化、異常気象、エネルギー価格の高騰・・。私たちの社会は、エネルギーに関する様々な課題に直面しています。そんな中、「究極のクリーンエネルギー」として期待されているのが、「核融合発電」です。
「核融合」と聞くと、SFの世界の話だと思ったり、あるいは「原子力発電」と混同して危険なイメージを抱いたりする方もいるかもしれません。しかし、核融合発電は原子力発電とは全く異なる原理で、私たちが抱えるエネルギー問題の抜本的な解決策になり得ると考えられています。
この記事では、まだ開発途上にある核融合発電について、誰でもわかりやすく、その仕組み、メリット、現在の開発状況、そして残された課題まで、詳しく解説していきます。未来のエネルギーについて一緒に考えてみましょう!
1.核融合発電って、いったい何?原理をわかりやすく解説!
核融合発電を理解するためには、まず「核融合」とは何かを知る必要があります。
1-1.核融合とは?太陽のエネルギーと同じ仕組み!
「核融合」とは、軽い原子核同士が合体(融合)して、より重い原子核になる際に、莫大なエネルギーを放出する現象のことです。 これを聞いてピンとくる方もいるかも知れません。そう、私たちの太陽が輝き続けているのも、この核融合反応のおかげなのです!太陽の中心部では、水素原子核同士が核融合を繰り返し、ヘリウム原子に変化する際に、莫大な光と熱を放っています。

1-2.核融合発電で使う燃料は、水から作れるってホント?
核融合発電で主に燃料として考えられているのは、「重水素(じゅうすいそ)」と「三重水素(さんじゅうすいそ)」という水素の仲間たちです。
- 重水素:海水中に豊富に含まれており、地球上のどこでも手に入ります。まさに「水から燃料が作れる」と言われる所以です。
- 三重水素:自然界にはごくわずかしか存在しないため、核融合炉の運転中に人工的に生成する必要があります。核融合反応によって放出される高エネルギーの中性子を、炉心を取り囲む「ブランケット」と呼ばれる部分に配置されたリチウムに衝突させます。この衝突によって、リチウム原子が中性子を吸収し、三重水素とヘリウムに変換される核反応が起こります。リチウムも地球上に比較的豊富に存在します。
これらの燃料は、ウランなどのように特定の国に偏在するものではなく、地球上に広く存在するため、エネルギー安全保障の観点からも非常に優れています。
1-3.プラズマって何?核融合を起こすためのカギ
核融合を起こすためには、重水素と三重水素の原子核を非常に高い温度(数億度!)に加熱し、バラバラになった原子核と電子が飛び交う「プラズマ」という状態にする必要があります。
プラズマは、物質の第4の状態と呼ばれ、固体、液体、気体の次に来る状態です。この超高温のプラズマを、強力な磁場を使って閉じ込めることで、原子核同士が衝突・融合し、エネルギーを発生させるのが核融合発電の基本的な仕組みです。
2.核融合発電のココがすごい!夢のクリーンエネルギーのメリット
核融合が「究極のクリーンエネルギー」と呼ばれるのには、明確な理由があります。
2-1.核融合の燃料は無尽蔵!
前述の通り、核融合発電の燃料は、海水中の重水素とリチウムです。これらは地球上にほぼ無尽蔵に存在するため、燃料枯渇の心配がありません。一度核融合発電が実用化されれば、私たちのエネルギー自給自足の夢が大きく近づきます。
2-2.CO₂を排出しない!地球温暖化対策の切り札
核融合反応は、炭素を含まない水素原子同士の反応なので、発電時に二酸化炭素(CO₂)を一切排出しません。これは、地球温暖化対策、脱炭素社会の実現に向けた最大の貢献となります。
2-3.放射性廃棄物が大幅に少ない!安全性への貢献
核融合発電は、核分裂反応を利用する原子力発電とは異なり、高レベル放射性廃棄物を排出しません。発生する放射性廃棄物も、その放射性レベルや寿命が格段に低く、最終処分が比較的容易です。また、原理的に核暴走のリスクも非常に低く、事故時の安全性も高いとされています。
2-4.資源の偏りが少ない!地政学リスクの低減
核融合燃料は地球上に広く存在するため、特定の国が資源を独占するといったリスクがありません。これにより、エネルギーをめぐる国際的な緊張が緩和され、地政学的な安定にも貢献すると期待されます。
3.核融合発電はいつ実現する?世界の開発状況と日本の挑戦
魅力的な核融合発電ですが、その実現にはまだ高いハードルがあります。しかし、世界中で研究開発が加速しており、着実に進展しています。
3-1.国際熱核融合炉「ITER(イーター)」計画とは?

現在、核融合発電の研究開発の中心となっているのが、フランスで建設中の国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」です。日本、EU、ロシア、米国、韓国、中国、インドの7国が協力して進める巨大プロジェクトで、「核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証すること」を目的としています。ITERは2025年の運転開始を目指しており、実用化に向けた重要なステップとなるでしょう。
3-2.日本の核融合研究の最前線!JT-60SAと民間企業の動き
日本も核融合研究において世界をリードする国の一つです。茨城県那珂市にある「JT-60SA」は、ITERと並ぶ世界最大級の核融合実験装置で、高性能なプラズマ生成・維持の技術開発を進めています。
また、最近では、国内のスタートアップ企業も核融合発電の開発に乗り出すなど、民間からの参入も増え、実用化への期待が高まっています。
4.核融合発電の課題と克服への道のり
多くのメリットを持つ核融合発電ですが、実用化にはまだいくつかの課題が残されています。
4-1.超高温プラズマの「閉じ込め」技術
数億度という超高温のプラズマを安定的に、かつ長時間にわたって閉じ込める技術は、核融合発電の最大の難関です。プラズマの不安定性を克服し、効率的にエネルギーを取り出すための研究が続けられています。
4-2.建設コストと経済性
核融合炉は非常に大規模な設備が必要となるため、建設コストが膨大になることが予想されます。いかにコストを抑え、経済的に成立する発電システムを構築するかが課題です。
4-3.材料開発の進展
核融合炉の内部は、超高温のプラズマに常にさらされるため、非常に高い耐久性を持つ材料が必要です。放射線に強く、長期間の使用に耐えうる材料の開発も重要な課題の一つです。
4-4.三重水素の自己生成技術
核融合反応で消費される三重水素を、炉内で効率的に生成する技術(増殖ブランケット技術)の確立も実用化には不可欠です。
まとめ:核融合発電が拓く、持続可能な未来への道
核融合発電は、まだ研究開発の途上にあり、実用化までには時間を要するかもしれません。しかし、そのポテンシャルは計り知れません。もし核融合発電が実現すれば、私たちは以下のような未来を手に入れることができるでしょう。
- エネルギー問題の根本的解決
- 地球温暖化の抑制とクリーンな空気
- 安定したエネルギー供給による社会の安定
核融合発電は、人類が直面する大きな課題に対する希望の光です。今後の研究開発の進展に期待し、私たち一人ひとりがエネルギー問題に関心を持つことが、未来を拓く第一歩となるでしょう。
参考サイト
核融合発電の原理・仕組み、メリット・デメリット、安全性、課題について
- 日本レーザー: 核融合発電の基礎から将来性と課題まで、わかりやすく解説!エネルギーの未来を支える新技術について詳しく知りたい方必見!
- 松定プレシジョン: 核融合発電と原子力発電の違い
- ストックマーク: 核融合エネルギーはなぜ注目されているのか?発電の仕組みやメリットについて
- yh株式会社: 今注目の「核融合発電」とは?原子力発電との違いやメリット・デメリットを解説!
- PEAKS MEDIA: 核融合発電とは?仕組みやメリット・デメリット・原子力発電との違いを解説
- sellwell(セルウェル): 核融合エネルギーとは?メリット・デメリット・危険性などを解説
- アスエネ: 核融合発電の実用化は可能?課題や最新動向について解説
- みずほ銀行: 核融合発電を取り巻く足下の動向
国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」について
- 核融合実験炉ITER日本国内機関: 一般の方向けページのご案内|核融合実験炉ITER日本国内機関
- 文部科学省: ITER(国際熱核融合実験炉)計画について
- 外務省: イーター(ITER)事業|外務省 – Ministry of Foreign Affairs of Japan
- 三菱重工: 核融合エネルギー: ITERへの取組み | 三菱重工
日本の核融合研究機関について
- 核融合科学研究所 – Wikipedia: 核融合科学研究所
- 観光いばらき公式ホームページ: 日本原子力研究開発機構 那珂核融合研究所
- 文部科学省: 関係機関等へのリンク – 文部科学省
- 内閣府: 核融合研究開発の現状
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